辛光洙とフジモリ
日本政府は現在、北朝鮮政府に対して、元工作員辛光洙の身柄引き渡しを要求している。国際刑事警察機構(ICPO)を通じた国際手配も行った。容疑は地村・蓮池両夫妻、原敕晁さんらの誘拐への関与である。
しかしその日本政府はかつて、ペルー政府からの要求に対して、犯罪容疑者の身柄引き渡しを拒否している。容疑者の名はアルベルト・フジモリ、容疑内容は暴行、誘拐、殺人、組織犯罪への関与その他。もちろんICPOによる国際手配も行われていた。
このとき日本政府は、フジモリが日本国籍を持っていると主張し、ペルーと日本との間には犯罪人引渡条約がないから自国民であるフジモリを引き渡すことはできない、としてペルー政府の要求を拒絶した。ICPOの手配書に対しては、「インターポールの手配書は、日本の裁判所が発する逮捕状にあたらない」と言ってこれを無視した。(2003年3月27日、高島肇久外務報道官)
ペルーで生まれ、ペルー人として大統領にまでなったフジモリを自国民だと言う政府の主張は恣意的としか言いようがないが、ここでは仮にそれを認めてみよう。この場合、辛光洙についてはどうなるか。
辛光洙が北朝鮮国民であることは疑いようがない。
国交自体がない日本と北朝鮮との間に犯罪人引渡条約などあるわけがない。
ICPOの手配書が、「北朝鮮の裁判所が発する逮捕状」でないことも明白だろう。
ならば、日本政府はどの面下げて辛光洙の引渡しを北朝鮮に要求できるのか。自分たちが拒絶したのとそっくり同じ論理を、どうして他国に対しては突きつけられるのか。
厚顔無恥とは、こういうことを言うのだ。
ペルー政府からの身柄引き渡し要求を拒絶する際、日本政府は、「自国民は自国で裁く」「虐殺事件の刑事責任については日本の司法当局で文書を基に検討する」と述べた。しかし、日本政府はフジモリを自国の責任において裁くどころか、いつのまにか出国させてしまった。殺人容疑者にパスポートを与え、国外逃亡を公然と許したのだ。しかも、ペルーや出国先のチリに通知さえしなかった。
とんだ「法治国家」もあったものだ。このような日本政府に、辛光洙を北朝鮮政府が英雄扱いしようがどうしようが、文句を言う権利などないのである。
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